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貧女の一灯

貧女の一灯(ひんにょのいっとう)

 

須達長者(しゅたつちょうじゃ)はインドていちばんの 大金持ちでした。

長者はご信心の強い人で、仏さまにお供養しようと、祇園精舎と いう立派なお道場を建てました。

祇園精舎に仏さまがお越しになると聞いて、みんながお灯明をお供養しました。仏さまの足もとを照らす明かりをお供養するのは、とってもすばらしい行ないだと知っていたからです。

万の明かりを灯す人、千の明かりを灯す人、 百の明かり、十の明かり、そして一つの明かりを灯す人・・・。

みんな自分のお財布と相談して、 お灯明をお供養したのです。そこに、ボロボロ の服を着た貧しい女が一人、ポツンと立っていました。

貧女は、自分もなんとかして仏さまにお供養 がしたいと走りまわったのですが、とうとうお 灯明の油を買うお金を用意することができませんでした。

「尊い仏さまに自分は何もさせていただけない。お灯明一つお供養できない」

そう思うと、貧女は情けなくなり、涙が一粒頬を伝って落ちました。 すると、ずっとがまんしていた涙が、あとからあとからあふれて止まらなくなりました。

「ああ、この涙が油なら、仏さまにお灯明をたくさんお供養できるのに・・・」

涙にくれながら、女は一つのことに気がつきました。

「そうだ、自分の、この髪を売れば、油を買うことができる」

髪は女の命といいます。女は、長い髪をバッサリと切り、それてようやく、小さなお灯明を一つお供養することができました。

 

さて、日も幕れていよいよ仏さまが大勢のお弟子方といっしょに、祇園精舎に到着しました。そのとき、とつぜん大風が吹きはじめ、仏さまの足もとを照らしていた何万という灯明が次々と風に吹き消されてしま いました。

しかし、真っ暗な闇の中てたった一つ、風に揺れながら明るく灯って いる明かりがありました。それは、あの貧女が我が身に代えてお供養し た小さな小さな「貧女の一灯」でした。 仏さまはその一灯に照らされて、祇園精舎にお入りになったのてす。